「お腹へったでち…もう何日も食べてないでち…」
国を飛び出して約1年。精霊は人間ほど食事をしなくて済むがそれでも空腹感は辛かった。
「もう…帰りたいでち…」
「うっ…うっ…うわーん!
アンリィ!ルシアぁ!
でちはここでちよー!」
泣いて、泣いて、泣き疲れたまま眠りにつく。
「ふー。そろそろいくでちか」
そして夜が明けたら、でちはまた歩きはじめる。
広大な大地を
果てなき大海原を
凍りつく雪原を
その小さな体で乗り越えて。
いつか旅の終わりに
夕暮れの丘を登っていくその日まで。