幽らり

みんな見ている。邪悪な夢を。

森妃⑤ でちの旅

「お腹へったでち…もう何日も食べてないでち…」

国を飛び出して約1年。精霊は人間ほど食事をしなくて済むがそれでも空腹感は辛かった。

「もう…帰りたいでち…」

「うっ…うっ…うわーん!
 アンリィ!ルシアぁ!
 でちはここでちよー!」

泣いて、泣いて、泣き疲れたまま眠りにつく。


「ふー。そろそろいくでちか」

そして夜が明けたら、でちはまた歩きはじめる。

広大な大地を


果てなき大海原を

凍りつく雪原を

その小さな体で乗り越えて。

いつか旅の終わりに
夕暮れの丘を登っていくその日まで。

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テーマの著者 Anders Norén