鮮やかな夕日が海を染めていく頃、一日中ルシアを犯し抜いたチンピラ達は酒飲んで盛り上がっていた。あれから数時間、ルシアは男達に恥辱に塗れた行為を強要され続け、ルシアはも言われるがままに従っていた。まるで絶望を被虐の快楽で塗りつぶそうとするかのように。
これからは毎日輪姦してやるぜ!
客を取って稼いでもらうぜ。淫乱な奥さんには堪らないだろう?
AVデビューも俺たちでプロデュースしてやるぜ!
チンポには事欠かない生活が待ってるぜ、幸せだろう?奥さん!
ふぁ、ふぁい…ひはわへでふぅ…
男達の足元で肉棒を咥えながら答えるルシア。もはやその瞳に理性の光は宿っていなかった。
それはお前達の役目じゃない。
チンピラとは違う声がした。氷のように冷たい、ルシアがよく見知った声。
れ、令二さん!
ルシアは両手で身体を隠そうとする。まるで浮気現場を見られた妻のように。
来ると思ってたぜ。
チンピラ達は一斉に立ち上がると素早く令二を囲む。その手には酒瓶やナイフが握られている。
彼らは既に決めていた。この男を殺してルシアを奪うと。
これまで人を殺したことはなかった。だがそのリスクを犯してでも奪う価値がこの女にはある。この広い海なら、人一人沈めてもしまっても、そうそう見つかることはない、まして土地勘がある自分達なら尚更だ。チンピラならではの浅知恵でそう考えていた。
約束の時間だ。金を払って、その女を返しな。
チンピラ達に囲まれても令二は余裕の表情を浮かべている。
この女はもう俺たちのもんだ!
てめえには沈んでもらうぜ!
4人が一斉に令二に襲いかかろうとしたその瞬間、海岸の背後の絶壁から三人の影が飛び降りてきた。そして狼狽するチンピラ達へと襲いかかる。それは屈強な3人の男達だった。三人はチンピラ達を次々と叩きのめしていく。その洗練された動きは、相手を効率的に仕留めるために訓練されたものだった。力任せに拳を振るうだけの喧嘩しか知らないチンピラ達では指一本触れることすら叶わなかった。
ルシアはその三人に見覚えがあった。令二の部下だ。明らかに日本人の顔つきではないのに、日本人の性を名乗っていた。令二が外国からわざわざスカウトした男達で、日本籍を取れるように令二が裏から手を回した連中だと聞いていた。。
チンピラ達が次々と浜に崩れ落ちる。令二と対峙していたリーダー格のチンピラは自らの不利を悟ると、人質にしようとルシアの方へ駆け寄る。
きゃあっ!
鬼気迫る顔で向かってくるチンピラに怯えるルシア。しかしチンピラがルシアに手を伸ばそうとした刹那、ルシアの目の前でチンピラの顔がひしゃげた。令二の蹴りがチンピラの顔面を蹴り上げたのだ。チンピラの返り血がルシアに跳ねる。
ひいっ!
初めて目の前にする暴力にルシアは悲鳴を上げる。
そのまま令二は拳と蹴りでチンピラを叩きのめす。
「喧嘩が強い」そんなものを誇りにできるのは、せいぜい中学まで。しかしこのチンピラ達は成人を過ぎても、そんなものをプライドにし、そして呆気なくへし折られた。
す、すいませんっ! 許してください!
な、何なら別の女さらってきて、アンタの為に働かせますよ。
悪い話じゃないでしょ! ねえ!
地面に這いつくばりながら、下衆な命乞いを始めるチンピラ。さっきまでルシアを嬲っていた時の尊大さは消え失せていた。自分より弱い者に対しては徹底的に残酷になるが、強者には卑屈にへつらう。それがチンピラがチンピラたる所以だ。
ぶッ!!
そんなチンピラの提案など一顧だにせず、令二がチンピラの口に蹴りを叩き込む。チンピラの折れた前歯が砂浜に飛び散る。そのまま倒れたチンピラの頭をサッカーボールのように何度も蹴り飛ばす。やがてチンピラの体は痙攣を繰り返すだけになった。
積み重ねる努力を嫌い、怠り続け。
真っ当に学ぶことも、働くこともせず。
粗暴さと、腕力と、群れることで狭い田舎で幅をきかせることができた。
酒、女、車、ギャンブルと、快楽だけを追い求め
果てはレイプを娯楽とする人間のクズへと成り果てた
そんな生まれるべきではなかったクズ達の
クソのような人生が、今日唐突に幕を下ろした。
ふん、こいつらハナから踏み倒すつもりだったか、ろくに持ってねえ。
そう言うと令二はへたり込んでいるルシアの前に、チンピラ達から奪った財布を投げ捨てる。
拾いな、今日の奥さんの稼ぎだ。
か、稼ぎ…。何を、何を考えてるの令二さん!
なんで、なんであんなことを…
そろそろ奥さんには借金を返してもおうと思ってな。
借金なんてしてないッ!
いやもう6ヶ月も滞納してるぜ…
調教料だ。
なっ…
あれだけ気持ちよくしてもらってタダなんて虫が良すぎるだろ?
月30万。6ヶ月で180万。
滞納利子込で300万ってところだ。
いや、もうすぐ今月分も含めて330万か。
れ…令二さんが、令二さんがッ!
無理矢理、調教したんじゃない!
こんなお金払えないわ!
令二を非難するルシア。しかし令二は無言のままルシアの携帯を目の前に投げ捨てる。別荘においてきたはずのものだった。ルシアが携帯に目をやると、何件もの着信が入っていた。あの寝取られビデオレターを夫へ送りつけられてしまったのだ、当然の結果だろう。これから訪れる破滅に体が震える。だがふと気づく。着信は夫からのものではない。
恐る恐る残っていた留守電を聞くルシア。それは夫の同僚からのものだった。
その内容はルシアをさらなる恐怖へと突き落とした。
数時間前、夫がひき逃げにあって病院に運ばれたというものだった。命に別条はないが複数を骨折しており、まだ意識が戻っていないということだった。
・・・震える手で電話を切るルシア。
あ・・あなたが・・・
令二に何か言おうとした時、突然海の向こうからエンジン音を鳴らしボートが、この岸に近づいて来る。ボートは岸の近くまで寄せると、令二の部下達は倒れていたチンピラ達の体を次々に海へと放り込む。ボートの船員が棒のような道具でチンピラ達の体をボートへ引き上げていく。もはや彼らが生きてないことは明らかだった。恐怖に固まるルシアに令二が告げる。
次は骨折じゃ済まないぜ・・。奥さん。
今日のように、その体で客を取って稼ぐんだ。
旦那が働けなくなった以上、金はいくらでも必要だろう?
金が目的ではない、この男は自分を地獄に落とそうとしているのだ。
夕日が逆光となり、ルシアからは令二のシルエットだけしか見えない。
しかしルシアにはその影がまるで悪魔のように思えた。
なぜ一時でもこんな恐ろしい男を愛おしいと感じてしまったのだろうか。
夫を守るためにも警察に行かなければ‥。
必死に考えはじめたルシアの心を見透かしたように令二が淡々と告げる。
奥さんが警察に駆け込めば、俺は捕まるだろう。
だが必ず旦那は始末させる。
二度と奥さんが旦那と合うことはない。
それが単なる脅しでないのはもうわかっていた。
奥さん。旦那と最後になんて話をしたんだ?
ルシアは目の前がぐにゃりと歪んだような気がした。
最後に夫と交わした会話、それはこの旅行のためについた嘘だった。
抑えきれない快楽への期待に、嬉々として夫を裏切ったのだ。
もし今警察に駆け込めば、きっとあれが今生の別れとなってしまう・・・。
ちょうどチンピラの最後の一人が海からボートに引き上げられているところだった。
その男が言った言葉をルシアは思い出していた。
「悪い事したんだから罰を受けなくちゃ」と。
そうして、あの男はまさに罰を受けたのだ。
ルシアは悟った。この運命は自分への罰なのだと。
快楽に屈服し、嬉々として夫を裏切り続けた日々への罰なのだ。
かならずお金は返します。
だから…だから夫に手を出さないで…ください・・
令二に土下座して懇願するルシア。
ルシアは今までの自分の愚かさを後悔していた。そしてその代償として、これから先も今日のように男達に体を貪られながら生きていくことになるのだ。
燃え上がるような紅い水平線へ向かってボートが走り去っていく。
ルシアの瞳には、この鮮やかな夕焼がこれから自分が堕ちていく地獄の炎のように見えた。