【母・廃業】 中編 ② – 下衆 –

「銀蝿の羽山」「クズの竹仲」どちらもヤクザにすらなれないチンピラだった。

「銀蝿の羽山」すでに初老を超えているが、若い頃から金に強い執着があり、流行り物の商売に手を出すが、その異常な強欲さから目先の利益だけに執着した結果どれも失敗し、その都度、借金を踏み倒して逃げていた。金のあるところに銀蝿のように現れる。それ故羽山を知る者からは「銀蝿の羽山」と呼ばれるようになった。
数年前ついに借金を踏み倒したヤクザに捕まった。「お役に立ちます」と命乞いした結果、下部組織の振り込め詐欺チームの一つを任されることになっった。

「クズの竹仲」通称クズ竹。地元にいた頃から名のしれたクズで、腕っぷしが強いわけではないが、強いものには媚びへつらい、格下の相手は脅して虐め抜く。仲間すら食い物にする。恐喝と強姦の常習犯。捕まらなかったのは罪を仲間になすりつけてきたからだ。そんな男だから不良仲間からは縁切りされ、ヤクザですら竹仲を門前払いにした。地元に居場所のなくなった竹仲は、結婚詐欺でだまし取った金を元手に都会に出てきた。地元と同じ末路を辿りかけた竹仲を拾ったのは羽山だった。

振り込め詐欺チームは恐怖でメンバーを支配しノルマを達成させる必要があった。羽山のチームのメンバーはヤクザではない、ワリのいいバイトがあると応募してきた浅はかな若者達だ。ノルマを達成させつつ、逃げたり警察に行かないよう、脅し恐怖で縛る役目が必要だった。それがクズ竹だった。人を痛めつけることを素直に楽しいと感じられる竹仲にとってまさに理想の環境だった。たとえ非が無くてもメンバーの誰か一人を見せしめにすれば恐怖で縛り思い通りに動かせる。羽山にとって竹仲は良い駒だったし、竹仲にとっても羽山は都合のよい雇い主であった。


羽山が振り込め詐欺で稼いだ金は、ほとんどヤクザに吸い上げられ借金の精算に回される。それ故、羽山は副業として夜の街で売春の斡旋をしていた。事務所では自分のことを社長と呼ばせ自尊心を満たしているが、夜になればポン引きと変わらない状況に日々不満を抱えながら生きていた。

ある日、斡旋仲間の紹介で、とある裏ステージショーを観る機会ができた。それは人妻を調教しその過程のビデオ含めショーとして愛好家達に見せるというものだった。さらにその人妻を娼婦として売るというものだった。羽山にとってまるで興味のない世界であり、「骨格の崩れたおばさんの何が楽しいんだ」そう毒づいたものの、実際に見たショーの凄さと、そして何より、一晩で動く金額に多さに驚愕した。

こんなに儲かるものだとは…ポン引きなんてやってられん。
しかも人妻を脅迫して調教できれば元手はタダだ‥

そうして強姦慣れした竹仲を仲間に加え、この数ヶ月売れそうな人妻を物色し、不幸にも標的となったのがルシアだった。

金のため人を奴隷とすることに良心の呵責をもたない男、羽山。
人を虐げることを楽しむ男、竹仲。
下衆とは彼らを表すためにある言葉だった。